不眠が招く認知症?

第4回HSPH&JaRAN合同勉強会(第7回精神医学・メンタルヘルス・心理学勉強会)

日時:4月17日(木)18時〜20時 (その後希望者で懇親会)
場所:ハーバード大学公衆衛生大学院 FXB-G12
http://www.hsph.harvard.edu/about/files/Longwood_Campus.pdf
(ページ右下です。)

発表者: 朝山健太郎 先生 (精神科医
Research Fellow、McLean Hospital, Geriatric Psychiatry

「不眠が招く認知症?」

アルツハイマー型痴呆の患者数は世界で2,660万人、我が国では現在
200万人と推定されています。2020年には全世界で4,000万人、2040年
には8,000万人が世界で罹患すると推測され、毎年460万人が新たに
発症しているとされています(7秒に1人の割合で新たに発症して
いると言われている)。

家族、介護者の精神的負担は高いうつ症状出現率(48%)に現れ、
その経済的損失は治療、介護費用は実費以外の家族コストも含め
認知症身体疾患高齢者では約59,000ドルのところ、認知症高齢者
では約77,000ドルという報告が大手民間保険会社よりなされています。

現在はこのような介護者の様々な負担を軽減することも重大な課題
とされ、その中でも夜間徘徊を伴う睡眠障害の与える介護者への
負担を減らす方法に注目が集まっております。従来より認知症
伴う高齢者の睡眠覚醒リズムの障害は脳視床下部に存在する視交
叉上核の生物時計の神経変性に伴う機能低下によるもと考えられ
てきましたが、現在はそれに加え、外界の時間刺激の獲得能力の
低下なども指摘されています。人間の生理的time keeping system の
理解が深まるにつれ、睡眠を改善させる方法がより具体的に提示
できるようになって来ました。

また昨今の睡眠障害研究の成果の一つとして睡眠の質が記憶を強化
していることは健常者のあらゆる年齢層で確かめられています。
睡眠覚醒リズムの崩壊を最終段階とすると、その前段階の
軽度の睡眠障害、あるいは軽度の認知障害の段階で睡眠と認知機能
の間に何らかの関係が見えてくるのではいかと我々の研究グループは
考えるに至りました。

この認知症の一歩手前ではないかと考えられる状態は軽度認知機能障害
(Mild Cognitive Impairment;MCI)と呼ばれております。このMCI群の
有病率はアメリカでは60歳以上で5%、75歳以上で15%となると
報告されています。また、ここ数年では睡眠時無呼吸による低酸素負荷が
高血圧、脳血管障害、心血管障害などの症状を増悪させ、同時に神経
心理学的認知機能の低下、感情障害の危険因子にもなりうるという
見解も出されています。過去の調査では睡眠時無呼吸症候群は高齢者の
〜60%(軽度を含めて)に見られるのではないかという指摘もされており、
潜在的に認知機能障害の間接的ではあるが大きな危険因子ではないかと
言われることもあります。認知症・加齢により睡眠がどのように変化
するのか、さらには睡眠が破綻した結果起こる不眠・夜間徘徊などの問題も、
介護者の負担という点では深刻な問題でありどのように対処したらよいのか
といったことも含め、健康的な睡眠、精神状態と脳機能の低下との関係
についてもお話をしてみたいと思います。

参加お申し込みは

1.お名前
2.所属(日・米)
3.研究テーマ・興味のあるテーマ

を明記の上、natsuko.kuwahara at gmail.comまで4月16日(水)午後5時までに
お申し込み下さい。

JaRAN精神医学・メンタルヘルス・心理学勉強会幹事:
朝山健太郎(マクリーン病院)、桑原奈津子(ハーバード教育大学院)

HSPH勉強会幹事:松浦広明(ハーバード公衆衛生大学院)