医療事故と刑事司法----刑事法学の観点から----

医療事故と刑事司法----刑事法学の観点から----

講演要旨:

医療の安全確保,そして患者や国民一般の医療に対する信頼の確保の観点から,
医療事故に関する公的な調査制度の創設が検討され,政治日程に上っています。
具体的な制度設計に際しては,事故調査と刑事司法の関係をどのように調整する
かが大きな課題となっています。

医療事故の法的な処理のあり方に関する法学界と医学界の間の対立は,相互の対
話を通じて一時期に比べればかなり解消されてきました。しかし,それでもなお,
相互の誤解ないし理解不足に起因する議論の混乱がなくなったとはいえません。

医療事故に対する刑事司法の介入に関して共通の土俵で建設的な議論をするため
には,医療従事者の側に,刑事法の仕組みに関する基本的な知識を持っていただ
くことが重要です。そこで,今回の発表では,医療事故に関して問題となり得る
ごく基本的な法律問題について,主に刑事法の観点から説明します。

具体的には,医療をめぐる基本的な法律関係,民事と刑事の違い,過失犯処罰の
基本的な考え方,刑事手続の基本的な仕組みのほか,都立広尾病院事件,福島県
大野病院事件などで問題とされた異状死体の報告義務,刑事免責の概念などに
ついて述べることにします。法律の専門知識のない方を念頭に,できる限りわか
りやすくお話しするつもりです。

その上で,厚生労働省の策定した医療安全調査委員会設置法案(大綱案)の内容
にも触れる予定です。

もとより,私を含め法律の専門家は医療に関しては素人です。法律専門家が,医
療に関する知識を吸収することに努める必要があることはいうまでもありません。
この機会に,発表者自身も,医療従事者の側の考え方を学びたいと思います。

※ この発表は以上のような趣旨のものですので,個別具体的な医療過誤事例を
取り上げ,あるいは,一定のシナリオを想定し,それについて過失犯が成立する
か否か,起訴されるか否か,有罪か無罪か,実刑か執行猶予かなどを検討する
「症例研究」を行うものではありません。

講演者:笹倉宏紀氏

Fulbright Visiting Scholar
East Asian Legal Studies
Harvard Law School

日時:3月10日(火)18:00時〜(その後希望者で懇親会)
場所:ハーバード大学公衆衛生大学院 FXB-G12


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参加お申し込みは
1.お名前
2.所属(日・米)
3.研究テーマ・興味のあるテーマ
4.今後の勉強会への希望(optional)

を明記の上、curiositykilledtomcat@hotmail.comまでお申し込み下さい。

HSPH勉強会幹事:松浦広明/まっぴ〜(ハーバード公衆衛生大学院)
JARAN幹事:小野智子(ハーバード公衆衛生大学院)